Qレシオ(読み方:きゅーれしお|英語:Q ratio)とは、「実質株価純資産倍率」とも呼ばれる、株価を時価ベースの1株当たりの純資産(+含み資産)で割って算出する株価指標のことです。企業の将来の収益性や資産の利用効率性を示す指標です。
QレシオはPBR(株価純資産倍率)と似た指標ですが、PBRは株価を簿価ベースの1株当たり純資産(資産ー負債)で割って算出する株価指標である点に違いがあります。Qレシオの「Q」は、ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ジェームズ・トービン(イエール大学)が提唱した企業の設備投資に関する指標である「トービンのq(トービンのq理論)」にちなんで命名されました。
トービンは、株式市場のすべての企業の市場価格をその交換費用と等しくすべきと仮定しました。一般的にQレシオはトービンが作成者とされていますが、Qレシオは1966年に経済学者のニコラスカルドールの出版物で最初に提案されたため、以前の書物ではQレシオのことを「カルドールのv」と呼ばれていました。ゆえに、Qレシオは「カルドールのv」ということもあります。
Qレシオの計算式は以下です。
Qレシオは、土地や建物、株式等の含み損益を勘案して算出するPBRであり、
と見る指標です。Qレシオは時価ベースで算出する指標であるため、簿価ベースのPBRより実質的な評価ができる指標ですが、純資産を時価評価するのは難しいため、正確にQレシオを算出することは難しいと言えます。そのため、データの入手可能性から、簡便法として時価総額と負債の簿価の合計を純資産の簿価で割って算出するのが一般的です。
Qレシオは、日本がバブル相場となっていた1980年代末、土地の含み益が多い企業の株式が高く買われており、従来のPBRやPERでは、その割高感が説明できなくなっていました。そこで持ち出されたのがQレシオです。当時は、売れるはずがないガスタンク基地までも含み益であるとして、東京ガスの株価が高騰したりもしました。ただし、Qレシオの登場後、すぐに株価は天井を打ち、大きな下落相場に突入しました。
Qレシオは、企業の市場評価と本質的価値の関係を表しています。つまり、市場が過大評価しているか過小評価しているかを推定する指標です。
Qレシオが1倍以下の場合、企業の資産を交換するための費用(交換費用)がその株式の価値より大きいことを意味し、株式が過小評価されていることを示しています。Qレシオが1倍以上の場合は過大評価されていることを示しています。
この場合の交換費用は、現在の市場価格に基づいて既存の資産を交換する費用を意味します。ただし、これは複雑な産業機械やソフトウェア、金融商品やのれんなどの無形固定資産など様々あるため、実質的に交換費用を推定するのは困難です。ゆえに、Qレシオは個々の企業を評価するための指標として信頼に足らないと見るのが一般的です。
また、様々な著書でQレシオが投資結果を正確に予測できていないことを証明しています。トービンの論文(1997年)のデータは、1960年から1974年までを対象としており、その期間はQレシオは機能していましたが、他の期間を見ると過大評価あるいは過小評価されている市場または企業を予測できていません。
Qレシオは、インデックスあるいは市場全体の相対価値を見るためにも使用されています。バブルなのかバブルでないのか。Qレシオは1倍を基準にするのが基本ですが、歴史的に見るとそうではありません。米国の金融口座データ(Z.1)では、平均的なQレシオの値は「約0.70」となっています。
Qレシオは、歴史的には2001年のピーク(天井)時には1.69をつけており、以後2019年にそれを上回ってきています。1921年や1932年、1982年の概ねボトム(底)と見られる時には約0.30をつけました。これまでの一番のボトムは1982年の0.28となっています。
トービンのq(Qレシオ)の推移は、当サイトの姉妹サイトである「株式マーケットデータ」で確認することができます。
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